帰りの電車の中で、愛人[AI-REN]第5巻を読み始めた。
 途中で読めなくなった。途中で本を閉じ、上を向き、そしてまた本を開いて読む。

 最寄の駅に着いた。乗っていた列車は最終。もう列車も来ないし、客も来ない。
 改札を出て、階段を下りたところの手すりに腰掛け、最終回を読む。辺りには誰もいない。

 どうしても、おれはハルカを中心に読んでしまう。最終回をハルカがイクルの家へ行って、回想する話にしたのは、おれとしてはよかった。
 イクルを昔から見守り続けてきたのはハルカだから、最後を締めくくるのはハルカがふさわしい。

 イクルとあいの子供が目を覚ますとき、ハルカが直感でわかり、イクルの家から走っていくところ。桜の咲く、あの庭のシーンがとても気に入った。ひまわりの咲くところも好きだけど、桜のシーンもいいね。

 第3、4巻あたりで、どこか遠くへ行ってしまったような感じのハルカだったけど、また戻ってきてくれたような。

 読んだ後、力が抜けた。ついに終わってしまったかという気持ち。読むのを躊躇してしまっていたのも、なんだか読んだら終わってしまうような感じがして。

 初めて愛人[AI-REN]第5巻を読んだ。嬉しい。嬉しい。
 これはきっと特別な事だ。
 神様が私に遣わしてくれたんだ。
 うんと優しく読んであげよう。
 ずっと一緒にいてあげよう。
 今度こそ、私はハルカみたいに
 良いスイックスになるんだ。

 田中ユタカさん、どうもありがとう。