小川信治「Behind You - 巨匠と王女たち」
2018.9.29-2018.11.2 日月休
11:00-17:00
ギャラリーあしやシューレ
兵庫県芦屋市親王塚町3-11
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「Behind You」シリーズの新作を中心に展示。
ギャラリーに入ってすぐに見えるのは、ロンド5(2017)。
鉛筆で描かれた大作。精緻な画面に見惚れる。
同じタワーが二つ並んでるけど違和感がない。
目を左に移していくと、オーヴェールの教会2(2011)、サクレクール1 サクレクール2(2017)と「Behind You」シリーズが並ぶ。
そしてさらに左へ目を移すと今回のメインの展示だと思われる、マルグリット・ドートリッシュ(2018)、エステ家の公女と一角獣(2018)が展示されている。
マルグリット・ドートリッシュにはクルミが、エステ家の公女と一角獣には一角獣が付け加えられている。一角獣を書き込むのは元の絵からするとかなりの付け加えになるので、絵の雰囲気自体も変わってしまうのではないかなと思ったり。
(トークイベントで言及あり。)
入り口の扉を挟んで、Perfect Dialogue(2018)。これは岡崎和郎氏と小川信治氏の2ショット。
ここから裏手の通路に入ると、ブランコの絶好のチャンス(2013)、朝顔のある連続体1 朝顔のある連続体2、金魚のいる連続体1 金魚のいる連続体2、耳を切った自画像(2011)が並んでいる。
ブランコの絶好のチャンスは元の絵画の示すところが下世話なもので、朝顔のある連続体、金魚のいる連続体は春画を元にしていて、裏手にこれを配置したのは面白い。
(トークイベントで言及あり。)
私の小川信治作品の目の付け所をシリーズ別に大まかに言うと、
「Behind You」シリーズは元の絵画が切断されているのは明らかにわかるのだが、元になる絵画を知らないと改変箇所がわからないことがある。予習が必要。
「Without You」「連続体」シリーズはあからさまに不自然なので違うことはわかるけど、元の絵画を知っておいて損はない。
「Perfect World」「Rondo」シリーズは写真や古い絵ハガキなどを元にしており、不自然だけどそれが自然に見えてしまう妙な感覚を味わえるのが面白いところ。元の写真を知らなくても楽しめる。
と考える。
全ては小川信治さんの精緻な描写力に基づいている。
世界とは何か、を作品で問い続ける小川信治さんのこれからの作品がどう発展していくのか楽しみ。
2Fに行く階段に千葉市美術館の個展と国立国際美術館の個展の図録が置かれていた。
これ欲しいなあ。
中を見ていると膜宇宙の話が。
宇宙の構造を膜宇宙で考えているとの話。
それが「Behind You」につながっている。こんなこと書かれていたんだな。読んでいるようで読んでないな。
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2Fで作品のイメージに合うワインが飲めるとのことで、ワイン以外の飲み物があることを期待して行く。(酒が飲めないので)
テーブルの上に小川信治さんの作品が一部置かれていたのでそれを鑑賞。
ワイン以外はノンアルコールビールか水だけで、おれの選択肢は水しかない。
ワインを出していた人に少し話をきく。
ワインは作品をソムリエが見て、そのイメージで選択されたものだそうな。
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小川信治「Behind You - 巨匠と王女たち」 トークイベント「芦屋観画談」
2018.9.29
17:00-17:30
ギャラリーあしやシューレ
兵庫県芦屋市親王塚町3-11
対談:秋庭史典(名古屋大学大学院情報学研究科准教授)×小川信治
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トーク内容をかいつまんで記述。引用は私のコメント。
内容や解釈の相違があるかも知れません。
今回の展示作品は教会をイメージしてつくられたというギャラリーあしやシューレのイメージに合うものを選択したという。
メインフロアには「聖なるもの」のイメージの作品を展示、裏の細い通路には「下世話なもの」を展示する。(春画をモチーフにした作品など)
昔から教会などの聖地の周辺には下世話なものがあったというのをこのギャラリーに表現したという。
この説明をきいて、裏にあの作品が置かれている理由がわかり、上手い展示だなと感じた。
今まではコンセプトでまとめて展示をしていたが、ここ最近は見る人がどう思うかという視点でシリーズにまとめずに混ぜて作品を展示しているとのこと。
絵に添付した説明を見てわかるというのは、コンセプチュアルアートではない。
確かに今回のようにギャラリーに合わせた展示の方が雰囲気は味わえるような気がする。
作家の考えるコンセプトとか見る人にとっては関係ない。
でも、作家のファンになってしまうとそういうところは気になってくる。
小川信治さんの作品は元の作品と比較した方がいいと思う作品もあるので、そういうところは元の作品を図示してくれるとありがたいような気もする。
一角獣が中央に大きく描かれた作品(エステ家の公女と一角獣(2018))は小川さんにとっては突拍子もない作品で、「Behind You」シリーズでは付け加えるのはほんのわずかなのだが、一角獣という大きなものを付け加えたのは、この絵の人物の波乱万丈の人生を思うとこれくらい付け加えた方がいいんじゃないかという思いからだそうな。
(元の絵はピサネロ「エステ家の公女」)
「Behind You」の作り方を説明。
絵を円筒状に丸め、一部を想像で書いて貼り付けて、元と違うところで切断し、また一枚の絵にする。
作品の発想について。
まずは記号を使って構造を考える。
それをイラスト化する。
作品の姿より作り方が先に頭に浮かぶ。
最終的な作品よりもそれを作り出す過程が先に思いつくというのが面白い。作品を作るための手段がもしかして目的もしくはそれに近い物になってるのかも知れない。
落書きのイラストを描いている理由。
イラストで自分の考えや想いを表現できる。
最近、アトリエの天井から水漏れしたのをきっかけに引っ越したとのことだが、これの前に日記として書いていたイラストにそれを予感するものがあったそうな。
Facebookにもアップされている小川信治さんのイラスト、これの展示もあってよいのではないかと感じていた。簡単な冊子にしてギャラリーに置いておくとか。
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